グロース・マイノリティ

ブリッジコンサルティンググループ#1

ファンドの伴走支援を受けて"戦略"と"想い"を実現

ブリッジコンサルティンググループ株式会社
代表取締役CEO
宮崎 良一
WMパートナーズ株式会社
代表取締役社長 / マネージングパートナー
徳永 康雄

IPO支援などのコンサルティングサービスを提供するブリッジコンサルティンググループ(以下、BCG)。5,000名以上の公認会計士を擁するプロシェアリング事業で独自のポジションを築いています。

同社は2021年にWMパートナーズ(以下、WMP)のグロース・キャピタル投資を受け、全国展開を加速。翌年の※TOKYO PRO Market(以下、TPM)上場を経て、2023年に東証グロース市場へ上場しました。どのような支援を受けて、成長ステージを駆け上がったのでしょうか? 資本政策や乗り越えた課題なども含めて、両社の経営トップに語り合ってもらいました。

TOKYO PRO Market:東京証券取引所が運営するプロ投資家向けの株式市場。株主数・流通株式・利益額などの形式基準(数値基準)がなく、柔軟なガバナンス設計による上場ができる。

【WMP選定の理由】 "大人ベンチャー"のコンセプトに共感

2021年5月、BCGはWMPの運営ファンドから投資を受けました。その経緯を聞かせてください。

宮崎:当時は会社設立10年の区切りを迎え、共同創業者の独立が決まっていました。彼の持株比率は30%以上。その動向が経営に大きく影響するので、譲渡先を慎重に検討する必要があります。そこで当社の株主陣に相談したところ、資本業務提携先でもあるギークスにWMPを紹介してもらいました。

徳永:ギークスは当社の投資支援先であり、2019年にIPOされています。御社の場合、2021年当時は複数の事業会社から資本参加の提案を受けていましたよね?

宮崎:ええ。複数の事業会社との具体的な商談も進んでいました。ただ、事業会社に大量の株式を保有してもらうと「BCGが特定の陣営に属した」と受け止められかねません。そんな“色”がつかないように、ファンドの資本を受け入れたのです。

なぜベンチャー・キャピタル(以下、VC)ではなく、グロース・キャピタルのWMPを選んだのですか?

宮崎:いちばんの理由は、当社の経営方針に合致したからです。私たちは若いスタートアップのように、アクセル全開で突っ走りたいわけではありません。大人なコンサルティング会社として、地に足をつけた成長をめざしています。WMPが提唱する"※大人ベンチャー"のコンセプトを聞いて、足並みが揃うと感じました。

また、対外的な信頼性が高い。WMPは日本政策投資銀行(政府系金融機関)の資本が入っており、安心感がありました。さらに全国の金融機関との接点があり、そのネットワークを活用できます。最後の決め手は、徳永代表が直接担当してくれたこと。代表者同士でコミュニケーションを深められるのが魅力でしたね。

大人ベンチャー:スタートアップと中堅中小企業の間に位置する成長企業。一定の事業基盤をもち、成長しながら利益を確保している。

【BCG投資の理由】 事業の成長性と経営陣の志を評価

WMPが投資を決めた理由を教えてください。

徳永:まず時代の潮流として、フリーランスが増えるのは間違いありません。それはエンジニアやクリエイターだけでなく、公認会計士も同じです。そして、ビジネスの独自性が高い。当時から多数の会計士が登録するプラットフォームを運営しており、ニッチトップの地位を確立。今後の事業成長は容易に想像できました。

さらに、宮崎代表を中心とする経営執行メンバーがすばらしい。事業推進力もさることながら、「会計士の経験・知見・想いを集めて日本経済を変える」という志に感銘を受けたんです。投資の意思決定に時間はかかりませんでした。

【全国展開の支援】 地銀系ファンド5社から資金調達

投資後はどのような支援を?

徳永:金融機関のネットワークを活用して、BCGの全国展開を支援しました。

宮崎:当社は地方拠点の整備を進めており、以前から全国の地方銀行(以下、地銀)に業務提携の打診をしていたんです。でも「検討します」という決まり文句が返ってくるだけ。新参者には突破口を開けませんでした。

徳永:その点、私たちの運営ファンドは多数の地銀から出資を受けています。カギとなる部署や人物を把握しているので、そこに直接アプローチしました。私の役割は業務提携と出資の依頼をセットにして、投資ラウンドの音頭を取ること。デューデリジェンスや問い合わせへの対応など、煩雑な実務はバリューアップチームの細田が支援しました。

宮崎:WMPには経営企画機能を補完してもらい、非常に助かりました。なにより、交渉のテーブルにつけたのがありがたかったですね。

徳永:お願い一辺倒では、先方も重い腰を上げてくれません。当社がリード出資者となり、安心して参加してもらえる環境を整えました。その結果、地銀系ファンド5社を引受先とする第三者割当増資が実現。シリーズC(総額1.7億円)の資金調達と業務提携に成功しました。

宮崎:調達した資金は、地方拠点のサービス強化に充当しました。その後は引受先の関係機関である地銀5行と連携し、地方企業に対するIPOやM&Aの支援を加速させています。

【社外取締役として】 孤独な経営トップのメンターに

資金調達を終えた2021年12月から、徳永さんはBCGの社外取締役を務めています。その役割を教えてください。

徳永:社外取締役にはコーポレート・ガバナンスを強化する役割があります。でもBCGはIPO支援を行うくらいなので、すでにガバナンスが効いていました。そのため、私の主な役割は経営のアドバイス。宮崎さんが悩んでいることを一緒に考えて、答えを導いています。

宮崎:経営者は常に悩みを抱えています。社内のメンバーに相談する場合もありますが、無用な不安を与えたくない。そんなときに徳永さんに相談して、支えてもらっています。メンターに近いかもしれません。

徳永:私も経営者なので、気持ちはわかります。内心では答えを決めていても、もうひと押しがほしい――

宮崎:まさにそうですね。ひとりでも意思決定するんですが、最後の5%や10%が極めて重要です。

【TPM上場の課題】 流動性が低く、種類株主の権利を毀損

BCGは東証グロース市場に上がる前に、TPMを経由しています。しかし、ファンドにとって投資先のTPM上場は歓迎できませんよね?

徳永:一般論としてはその通りです。TPMは流動性が低く、特定の投資家しか株式を売買できません。さらに株主平等の原則があるため、上場前に種類株を普通株へ転換し、投資契約や株主間契約などを解除することが原則として求められます。つまり、種類株を保有する既存株主は特別な権利を放棄しなければなりません。宮崎さんの想いを聞かなければ、私も反対していたでしょう。

宮崎:当社は東証グロース市場に直接上場することもできました。それでもTPMをめざした理由は2つあります。ひとつは株式市場の活性化。今後は一般市場のハードルが上がり、監査難民の増加も予想されます。でも日本経済の将来を考えると、上場の裾野を広げるべき。TPMがその受け皿になりうると考えていました。だから、当社がTPMを経由してステップアップ上場する事例を増やしたかったのです。

もうひとつはIPO支援サービスの強化。当社は全国展開を進め、地方のクライアントが増加しています。そういった地方の中堅企業が上場する登竜門として、TPMは有力です。そこで当社自らが上場して実体験をふまえたコンサルティングを行い、支援の質を高めたいと考えました。

【課題の解決策】 東証と3社協議を重ね、株主間契約を維持

既存株主から反対されませんでしたか?

宮崎:他の大株主は資本業務提携を結ぶ事業会社です。純投資ではないので、明確な反対はされません。とはいえ、社内に説明しづらいのは確かです。そこで株主として重視する権利や契約内容をヒアリングしたところ、残余財産の分配権と強制売却権の維持を求められました。

徳永:解決の糸口を探るため、東証の上場推進部にも相談しました。TPMに対する投資家の懸念点を伝え、建設的な議論を重ねる。そのうちに「ファンドにとってTPMが魅力的な市場になっていない」という認識が共有され、「変えなければ」という機運が醸成されていきました。

宮崎:関係者との慎重な協議を重ねた結果、「上場前に種類株は普通株に転換。ただし、株主間契約の内容を目論見書で開示することを前提に、株主間契約を維持する」というスキームを立案しました。その枠組みを既存株主にも説明し、TPM上場の賛同を得ることができました。

徳永:監査法人や主幹事証券会社にも、TPMを経由して東証グロース市場にステップアップする意義を直接伝えましたね。

宮崎:ええ。私ひとりでは心細いので、同席してもらいました。徳永さんに言い添えてもらうと、格段に説得力が高まります。なんとか監査法人と主幹事証券会社の協力を得ることができ、2022年5月にTPM上場を実現しました。

【資本政策の支援】 安定株主を増やし、グロース市場へ

TPMに上場している間に、WMPの運営ファンドはBCG株式の一部を事業会社に譲渡しています。なぜ一般市場ではなく、プロ市場で株式を売却したのですか?

徳永:TPMで売買実績をつくるためです。流動性が低いからこそ、TPMの歴史に残るだろうと。また、当ファンドの持株比率を下げる目的もありました。

当時は30%以上の株式を保有する大株主です。そのまま東証グロース市場に上がると「ファンドの売却圧力が強い」と評価され、株価を押し下げる要因となります。そこで事業シナジーが期待できる企業に打診し、BCGとの資本業務提携を仲介しました。そのひとつがプロネクサスとの資本業務提携です。

宮崎:もともと友好関係にある企業だったので、当社も提携を求めていました。安定株主を増やしながら、上場企業やIPOをめざす企業に共同提案などを行いたい。徳永さんと先方にお伺いして、そんなお願いをしました。

徳永:当ファンドが投資する前から「上場企業のクライアントを増やしたい」とお話しされていましたよね。プロネクサスとの連携により、それが加速しています。

宮崎:そうですね。事業面で多くの連携が生まれており、とても価値の高い業務提携となりました。上場企業のご紹介もいただき、感謝しています。同時に、資本政策を昇華させられたことも良かったです。

振り返ると、2021年は当社のターニングポイントでした。あのとき、30%以上の株式を誰に持ってもらうかは運命の分かれ道。そこでWMPを選んだ結果、さらなる成長を遂げました。だから、早く恩を返したかったんです。理想は数十倍にして返すことですが、最低でも出資金額は確実に回収してもらいたい。その適切なタイミングだと感じ、この時期に資本業務提携を結びました。

徳永:ありがとうございます。

その後、BCGは2023年6月に東証グロース市場に上場しました。わずか1年1ヵ月後のステップアップは史上最短です。

宮崎:モデルケースのひとつとして、TPM関係者の方々が紹介してくれています。あまりにも短期間なので、参考にしづらいようですが。

【企業経営の支援】 上場後も社外取締役として伴走

ファンドから派遣された社外取締役の場合、株式売却を見据えて上場前に取締役を辞任するのが一般的です。なぜ徳永さんはグロース上場後も社外取締役を続けているのですか?

徳永:宮崎さんにお願いされたからです(笑)。

宮崎:依頼の理由はシンプルです。これまでの経緯を考えると、徳永さんに伴走してもらう方が会社を大きくできる。だから、質の高い伴走支援を続けてほしいんです。特にありがたいのが、隔週の定例ミーティング。当社の業績は順調ですが、成長スピードが少し物足りません。ブレイクスルーのきっかけを模索しながら、留意すべき点などを話し合っています。

①売上粗利推移(クリックで拡大)

②経常利益推移(クリックで拡大)

徳永:支援当初と比べると、BCGの売上高は2倍以上に伸びています。とはいえ、成長のポテンシャルはもっと高い。ここから非連続の成長を遂げるために、M&Aや戦略出資のアドバイスも含めてサポートを続けます。あとは業務執行役員と面談したり、地方拠点を訪問したり。いまも各拠点と連携し、金融機関や上場企業などを紹介しています。

宮崎:他ファンドの実態はわかりませんが、かなり面倒を見てもらっていますよ。償還期限まで一緒に企業価値を向上させて、株式を高値で売却してほしいと願っています。

順調な業績推移に満足せず、さらなる高みをめざすわけでね。それでは、BCGのビジョンを聞かせてください。

宮崎:当社は公認会計士の正規雇用と業務委託を組み合わせたハイブリッド型のビジネスモデルで高成長を続けてきました。まずはこの事業に集中して、2030年までに圧倒的業界トップのプラットフォームを完成させます。そして私の経営者人生が終わるまでに、世界的コンサルティング会社と肩を並べたい。外資系ばかりではなく、和製のグローバルアカウンティングファームも存在すべきですから。

【成長志向の経営者へ】 出資者選びは相性を大切に

宮崎さんの経験をふまえて、成長志向の経営者へアドバイスをお願いします。

宮崎:出資者を選ぶ際は、相性を見極めてください。たとえば、多額の赤字をいとわずに大勝負をしたいなら、VCと相性がいいでしょう。でも堅実な成長をめざすなら、WMPのようなグロース・キャピタルがいい。特に新たなビジネスモデルで成熟市場に挑んだり、社会貢献性を重視したりする会社におススメです。WMPは経済的利益の追求だけでなく、私たちの想いにも共感してくれました。

WMPのポジショニングマップ(クリックで拡大)

経営者やファンドの投資家に対して、最後に徳永さんからメッセージをお願いします。

徳永:大型の資金調達をして、垂直的に跳ぶことだけが企業経営ではありません。着実に業績を伸ばしながら、非連続な成長をめざすのも立派な企業経営です。そんな“大人ベンチャー”に私たちは伴走を続けます。

よくファンドの投資家に尋ねられるんですよ。「買収もしていないのに、投資先の支援に時間を費やすんですか?」と。でも当社の基本姿勢は、バイアウト投資もマイノリティ投資も変わりません。投資先に人材やノウハウなどを提供し、さらなる成長に貢献する。このような方針に賛同していただける経営者や投資家と共に、産業の発展や変革を実現したいですね。

宮崎 良一 氏

Profile

宮崎 良一(みやざき りょういち)

公認会計士。同志社大学を卒業後、2006年に有限責任監査法人トーマツに入所。会計監査・IPO支援・内部統制支援・IFRS導入支援など、さまざまな業務を経験する。2011年に株式会社Bridge(現:ブリッジコンサルティンググループ株式会社)を設立し、代表取締役CEOに就任。公認会計士等に特化したプロシェアリング事業を展開し、多数の成長企業を支援する。2022年、同社はTOKYO PRO Market に上場。2023年、東証グロース市場にステップアップ上場。

徳永 康雄 氏

Profile

徳永 康雄(とくなが やすお)

立教大学を卒業後、2003年に日本アジア投資株式会社(JAIC)に入社。2013年までの10年間にわたり、投資業務に携わる。投資以外では、新卒採用や社長室を経験。2013年にWMパートナーズ株式会社を設立し、取締役社長に就任。2018年より代表取締役社長を務める。2021年5月、同社運営ファンド(WM グロース4号投資事業有限責任組合)がブリッジコンサルティンググループ株式会社に投資。同年12月に追加投資を行い、同社の社外取締役に就任。

会社概要

ブリッジコンサルティンググループ株式会社

  • 設立/2011年10月
  • 上場市場/東京証券取引所グロース市場
  • 資本金/1億8,200万円(2024年9月末時点)
  • 売上高/20億1,700万円(2024年9月期:連結)
  • 従業員数/70名(2024年9月末時点)
  • 事業内容/公認会計士等に特化したプロシェアリング事業、および付帯関連事業
  • 拠点/東京本社、大阪事務所、名古屋事務所、広島事務所、札幌事務所、福岡事務所
  • URL/https://bridge-group.co.jp/